輪島の猫は終了しようと思ってましたが、やっぱり最後に輪島で考えたことを記しておきます。
長いし、理屈っぽいので、読み飛ばしてくださって、結構です。 野良猫を撮り始めて9年ほどが経ちますが、ずっと考え、悩み続けてきたこと。 そして、未だに答えが見つからないこと。 それは、猫と人間とのあり方について。 写真を撮る前は「野良猫って、何にも縛られず、自由気ままに生きてていいな」と思ってました。 でも、彼らを撮り始めてすぐに、そうではないことに気付きました。 どんなに寒くても、どんなにお腹が空いても、どんなに具合が悪くても、外で暮らさなければならない野良猫たち。 その現実を目の当たりにするにつれ、写真を撮るだけで彼らを救うことができない自分に疑問を感じ、写真を撮ることを辞めようかと思ったこともありました。 しかし、いろんな場所でいろんな野良猫に逢ううちに、厳しい環境の中でも生きている野良猫たちには必ずと言っていいほど、彼らのことをそっと支える人たちがいることに気付きました。 猫を捨てたり、いじめたりする人がいる一方で、小さな命を見守る人がいる。 そして、そんな人がいるところの猫は、過酷な環境の中でも、その命を謳歌しているのです。 だから私は、飼い猫に比べたらずっと短いと言われる、彼らのその命を記録しようと思いました。 また、猫に温かい街は、人にも温かいということを多くの人に伝えたいと思いました。 そんな想いを以前、ブログに書いたら、ある地域猫の会の方から励ましのメッセージをいただきました。 写真を撮るだけで、猫たちに何もしてあげられない自分を、その方は励ましてくださいました。 それまでは地域猫の会のみなさんに対して、後ろめたいような気分を抱いていましたが、少しは罪を免れたような気がした出来事でした。 最近は、各地で地域猫の会が発足し、献身的な努力をされています。 無責任に餌をあげるのではなく、きちんと健康状態を把握し、これ以上無駄に死ななければならない命を無くすために、避妊・去勢手術をし、街の清掃までなさっている活動には脱帽するばかりです。 地域猫の会の方々が活動されているところでは、避妊・去勢済みの証として、耳の先がカットされていたりピアスがつけられたりしています。 そういう猫に逢うと、‘あ~、この子には ちゃんと見守ってくれてる人がいるんだな~’と少しホッとした気分になります。 でも、地域猫の会の方々の活動に感謝しながら、なんだか釈然としないものも感じていました。 輪島の猫は、全くありのままの姿です。つまり、避妊・去勢手術はされていません。 だから、毎年、仔猫が生まれます。 でも、病気になったり、寒さに耐えられなくて、死んでいく子がいます。 残酷な事実ですが、だからこそ、増えすぎることなく、適度な個体数が保たれているのです。 ひとつひとつの命を大切にするという意味では、きちんと避妊・去勢をして、飼えるものなら室内で飼って・・・というのが理想なのだと思います。 が、個人的に私は、輪島の猫たちの暮らしの方が自然だと思います。 「納棺夫日記」の中で青木新門さんが「美しい死に方」について語っています。 その中で、「最近とみに、ぶよぶよとした死体が多くなってきた」と言っています。 昔は病気になって、口から物が食べられなくなり、枯れ枝のようになって死んでいくのが常だったのが、医療技術の向上に伴い、物が食べられなくなっても点滴で栄養補給される、いわゆる延命治療の結果、ぶよぶよ死体が多くなったということでした。 死ぬべきときに死ぬ。 人間も猫も、どんな生き物にも共通の、理想の生き方のような気がします。 自然界の中で、バランスを取っていくためには、実はとても大切なことです。 ところが、高度に発展してしまった日本の都会では、それは許されないことなのでしょう。 死ぬべきはずの命も、人間だから過剰に保護される。 一方で、人間第一主義の人たちは他の動物たちに対して「庭を荒らす」「ゴミをあさる」などの理由で排除しようとする。 だから、地域猫の会の人たちのように、野良猫を管理し、猫たちの生きる権利を保護する人たちが必要になるのです。 でも・・・ 人間も地球を間借りしているだけの存在で、「ウチの庭」なんて、人間が勝手に決めた境界線です。 勝手に海を埋め立てたり、山を切り開いたり、地面をアスファルトで覆いつくしたり、動物たちにとっては迷惑きわまりない存在です。 だから、動物たちの、多少迷惑に思える行動も、「お互いさま」と思わなきゃいけないんじゃないだろうか。 そして、どんな生き物も平等に、死ぬべきときには死んでいくのが、本来の姿なのではないだろうかと思うのです。 でも、これは、今、自分自身も家族も健康だから、そして動物好きだから言えることで、そうじゃなかったら、また違う考えになるのかもしれません。 相変わらず、明確な答えが見出せない、私なのでした。 きょうもポチッとお願いします!! → ~~~~~お知らせ~~~~~ 初個展開催!! 早川敦子写真展 猫紀行 2010年4月23日(金)~29日(木・祝) 10:00~18:00(最終日は14:00まで) 富士フィルムフォトサロン名古屋
by a-nekotabi
| 2010-03-28 04:33
| 石川県
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Comments(4)
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by
ina
at 2010-03-28 20:05
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早川さんの言うことは、僕も思っていたことです。
輪島の猫で感じた自然(あえて野生とは言わず)猫。 きっと「共存」という人間との関係が猫に限らず昔からの自然な姿なのではないでしょうか? ノラ猫たちを保護、ある意味管理しているのは、それにかかわっている方に対して失礼な言い方ですが、人間の驕りと感じたりします。 弱者を守る強者。決して悪いことではないし、人間の義務と考えるのも必要なのかも知れませんが。 以前、ご意見を求めた「~してあげる」という話。 あのことと同じことを感じたりしています。
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お久しぶりです。
野良猫と接している以上、接すれば接するほど見えてくる一筋縄ではいかない、避けて通れない問題ですね。 ぼくもいまだに自分自身で整理しきれていない問題です。 ぼくは田代島を始めとする多くの島の人と猫との関係性を一つの理想と考えていますが、それを島外の社会において実践していくことはもはや不可能なことだとも思っています。 自然淘汰と保護。 多産と避妊・去勢。 猫たちの生存権と人間の権利主張。 たぶん・・・一元論で論議しても結論の出ないことなんだと思います。 なにかひとつの理想的な結論を導き出すにはあまりにも猫にまつわる人の考え方や優先順位は違い過ぎます。 猫好きと一口に言ってもその中身は多様です。 折衷案としての避妊・去勢は現代社会のなかでは良い悪いを超えて致し方ないことだとは思いつつも、「それは神様の領域ではないか?」といつも自問自答する自分がいます。 それでも野良猫たちと関わり続けるのは、彼らがまっとうな生き方を教えてくれるから・・・そんな気がしています。
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a-nekotabi at 2010-03-29 21:56
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a-nekotabi at 2010-03-29 22:00
>ドンさん、お久ぶりです。
猫たちが「まっとうな生き方を教えてくれる・・・」。 ホントにそうですね。 私も何度、小さな儚い命に教えられ、勇気づけられたことか。 せめて、猫に恥じない生き方ができるよう、これからも悩みながら、撮影を続けていきたいです。
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